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中世

平安時代の
姿を留める先人の知恵
宇佐神宮が大切にした千年前と変わらない荘園 田染荘

 米の豊作が何よりも尊ばれた時代。藤原氏と手を結び、日本の政治を動かし権力と財力を持った宇佐神宮は、九州の総面積の3分の1を荘園に持つ、九州一大きな荘園領主となった。その中でも大切にしていたのが、宇佐神宮から30分ほど車を走らせた場所にある、田染荘である。
 山のふもとにある神社から湧く水が、土地の高低差を利用して田の一枚一枚に水がうまく流れるよう、複雑な形の田を作った。土の質もよく、おいしい米がとれ、それを宇佐神宮に納めた。田染荘に千年前からある集落と水田の姿が現在まで形を変えずに継承される、日本でも数少なく貴重な遺産。
 曲がりくねった田の道沿いには、春は梅や桃が咲き、初夏の御田植祭の頃には美しい緑の水田になり、あぜ道に彼岸花がひそやかに咲く秋には黄金色の稲穂が首を垂れる。千年前もこの場所で同じ風景を見ていた人たちがいて、今もなお変わらない営みを守り続けていることを、同じ日本人として誇らしく感じた。

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